安静臥床と加齢による身体的変化の違い
最近、循環器の勉強をしています。
というのも、臨床では神経系・小児以外の疾患を診ています。
そのため、様々な疾患・分野を勉強しているのですが、個人的に内部障害に興味があるのでここのところ循環器を中心に勉強しています。
最近心疾患患者さんを受け持つことが多くなったというのもありますね。
そこで、職場に置いてあった日本心臓リハビリテーション学会の、指導士資格認定試験準拠 心臓リハビリテーション必携で勉強しております。
解剖・運動・生理学から疾患の概要、評価やリハビリテーションまで幅広く書かれております。
その中で、「あ、これ国家試験勉強でやったけど今あやふやになっていたな」という内容のものがありました。それが今回のタイトルにあるものになります。
今回は臥床時に起こる身体的変化と、加齢による生理学的変化の違いについてご紹介しようと思います!
理学療法士の国家試験でも出てくる内容でもあるので、学生であれば学びの場として、セラピストであれば復習として活用していただければと思います!
というのも、これから超高齢化社会に突入していく日本では、加齢による生理学的変化はしっかりと把握しておくべき内容ですし、高齢者が多くなり障害を抱えてくる人が増えれば寝たきりや臥床傾向になる人も増えてくることが簡単に予想できます。
これからの日本の社会を考えると、ここをしっかりとおさえておくことの重要性は高いと思います。
筋肉に関して、TypeⅠ線維だったり速筋線維といった言葉が出てきます。
ちょっとわからないな、忘れちゃったなという方はまずこちらをご参照ください。
それではいきましょう!
身体デコンディショニング
まずは身体デコンディショニング、安静臥床によって起こる変化からです!
骨格筋変化
- 骨格筋量の低下
- TypeⅠ線維の萎縮
- TypeⅡa減少とTypeⅡbの割合の増加
- 筋を取り囲む毛細血管数や毛細血管密度の減少
- ミトコンドリア容量の減少
- 解糖系酵素活性の(相対的)上昇
- 最大随意筋力の低下
動かないので当然筋力も低下します。1週間の安静臥床で約20%の筋力低下が起こると言われています。
筋力としては、TypeⅡ線維のほうが大きいので、TypeⅡ線維が割合的に増えるのなら復帰も早いのでは?
なんて考えは甘いです。
日常生活で働くのは主にTypeⅠ線維です。筋力としてはTypeⅡ線維に及びませんが、持久力が主です。
起きている時間、立っている間、筋肉は働き続けています。その時に働いているのはTypeⅡ線維なのです。
なので、重力に抗するための主に背側の筋肉にはTypeⅠ線維が多いのです。
これでわかると思いますが、TypeⅠ線維が萎縮すると日常生活動作でも疲れやすくなってしまうのです。
また、毛細血管数や血管密度も減少することで、十分に栄養や酸素がいきわたらなくなります。酸素がなくなるとATPを産生することができなくなりますし、すぐに疲労してしまいます。
循環動態変化
- 体液移動による循環血漿量減少
- 圧受容体反射の低下
- 交感神経活動に対する血管反応性の低下
筋肉だけでなく、循環機能にも影響を及ぼします。臥床継続により血液量・血漿量が減少します。これは、血液静水圧の減少と抗利尿ホルモンの分泌低下によって起こります。
血液量の減少は,赤血球より血漿の減少が顕著で、その結果血液粘稠度は亢進するため、血栓形成が促進され重大な血栓塞栓症を引き起こすことに繋がります。
圧受容体反射の低下により、起立性低血圧、頻脈を引き起こします。この2つ、特に起立性低血圧はリハビリの阻害因子にもなります。
起立性低血圧により、離床に難渋することはよくあります。症状が出ていなくても、血圧が急激にさがっているとリスクがあります。
呼吸筋
- 呼吸筋力の低下
- 運動呼吸循環応答の低下
呼吸に関わる筋肉も存在するのはご存知かと思います。
当然、筋肉ですので呼吸筋も筋力低下は起こります。
安静臥床に伴う呼吸機能への影響に関する記事もありますので、詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
加齢による生理学的変化
続いて、加齢による変化をご紹介します。
筋組成の変化
- 遅筋線維の割合の増加
- 速筋線維から遅筋線維への変化と速筋線維の断面積低下
安静臥床時と異なり、遅筋線維が増加します。
高齢者では歩くことはできても、力強さがなくなっていくのはこれが原因ですね。
また、後述しますが、遅筋線維の割合の増加は、収縮速度低下お一因でもあります。
筋線維の収縮速度の低下
- 遅筋・速筋どちらにも生じる
- 筋力低下
- 筋萎縮による筋量の減少
筋収縮速度の低下に関しては、トレーニングにより変えることはできません。
しかし、筋萎縮による筋量の減少はトレーニングにより軽減可能です。
よく、高齢者でも元気な方を見る機会があると思いますが、若年者よりも効果が現れるのが遅いだけで、トレーニング効果自体は十分にあり、エビデンスもあります。
だから、理学療法でも筋力強化練習を実施するんですけどね(笑)
最大酸素摂取量の低下
- 加齢とともにほぼ直線的に低下
酸素摂取量に関しても、トレーニングである程度改善することが可能です。
呼吸循環器系の変化
- 最大換気量の低下
- 最大心拍数、1回心拍出量の最大値の低下
その他
- 組織の弾性が低下し、脆弱になる
- 刺激への反応時間が低下
後半ちょっとコメント少なめですいません...(-_-;)
ただ、加齢変化での追記している「トレーニング」に関して注目してほしいです。
トレーニングで筋力upすることは可能です。
しかし、筋力の低下は30代から起こり始めると言われております。高齢者でもリハビリで筋トレをすること、自主的に運動をしてもらうことはもちろん大切ですが、我々若年者のうちから定期的に運動の習慣をつけておくこと、筋トレをすることも予防という観点から大切です。
ということで、臥床と加齢による身体的変化の違いについてご紹介させていただきました!