始めていいの?そんな不安を解消!離床基準について!
今回も専門的な内容をお送りしようと思いますが、また内容は新しいものになります。
いい加減溜まってる記事を早く書き上げろよって僕自身も思いますw
さて、今回は急性期での離床に関する内容です!
急性期では状態の変動が1日単位で起こります。あるいは、もっと短いかもしれません。
そんな中で、「あれ、この人離床を始めてもいいのかな?」、「昨日は調子よさそうだったけど、今日はなんか変だな。プログラムどうしよう」と、悩むことが僕自身結構あります。
そこで、自分の勉強も含めて、急性期で勤務しているセラピスト向けの、離床基準を紹介します。
目次
リハ中止基準
離床の前に、そもそもリハビリの介入をしていいのかどうかを判断する必要がありますよね!ということでまずはリハビリの中止基準を振り返りましょう!
学生の頃はアンダーソン・土肥の基準というものがあり、国家試験対策としても、実際に国家試験でもこれをもとにした問題がでております。
しかし、そのアンダーソン・土肥の基準よりも詳細なリハ中止基準があるので、そちらを紹介しようと思います。調べてみたら2007年の文献に載っていたのでビックリしました。国家試験にもこっちを反映しろよって正直思ってしまいましたね(笑)
1. 積極的なリハを実施しない場合
- 安静時脈拍40/分以下または120/分以上
- 安静時収縮期血圧70mmHg以下または200mmHg以上
- 安静時拡張期血圧120mmHg以上
- 労作性狭心症の方
- 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
- 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
- 著しい不整脈がある場合
- 安静時胸痛がある場合
- リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
- 座位でめまい・冷や汗・嘔気などがある場合
- 安静時体温が38℃以上
- 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下
2. 途中でリハを中止する場合
- 中等度以上の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛、頭痛、強い疲労感などが出現した場合
- 脈拍が140/分を超えた場合
- 運動時収縮期血圧が40mmHg以上、または拡張期血圧が20mmHg以上上昇した場合
- 頻呼吸(30回/分以上)、息切れが出現した場合
- 運動により不整脈が増加した場合
- 徐脈が出現した場合
- 意識状態の悪化
3. いったんリハを中止し、回復を待って再開する場合
- 脈拍数が運動前の30%を超えた場合。ただし、2分間の安静で10%以下に戻らない時は以後のリハを中止するか、または極めて軽労作のものに切り替える
- 脈拍が120/分を越えた場合
- 1分間10回以上の期外収縮が出現した場合
- 軽い動悸・息切れが出現した場合
4. その他の注意が必要な場合
- 血尿の出現
- 喀痰量が増加している場合
- 体重増加している場合
- 倦怠感がある場合
- 食欲不振時・空腹時
- 下肢の浮腫が増加している場合
基準として設けられているため、ぜひ覚えておきましょう。
覚えられないな~という人はいつも持ち歩くメモなどに書いておくか、印刷したものを挟んでおきましょう。
「そんなことするな!しっかり覚えろ!」っていう人もいるかもしれませんが、うろ覚えで誤った判断をしてしまうよりかは、しっかり覚えるまで確認して介入する方が、患者さんにとっても、セラピストにとっても安全です。
覚えられない場合は、なぜ中止になるのか、どうして注意が必要なのか、生理学的な視点から勉強しなおすと見えてくるかもしれませんね。僕もはっきりと「これはこういう理由でダメなんだよ」と言えないので、しっかり勉強してそれもアウトプットできればと思います。
離床について(ICU編)
近年、早期離床がかなりキーワードとなっています。日本離床学会という学会が発足されるほどですからね。
実際、ICUからの早期離床もさけばれているほどです。しかし、ICUにおける早期離床や早期からの積極的な運動の禁忌について、統一された基準は現段階ではないそうです。
ということで、まずICUでの離床について紹介します。
ICUでは、
- 意識障害
- 急性呼吸不全または慢性呼吸不全の急性増悪
- 急性心不全
- 急性薬物中毒
- ショック
- 重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病など)
- 広範囲熱傷
- 大手術後
- 救急蘇生後
- その他の外傷
- 破傷風などで重篤な状態に対して集中的な全身管理を要するもの
など、広範囲かつ重篤な方がいます。
このような場合、安静のうえ、各種臓器機能の改善と全身管理が最優先されます。
離床が広まっておりますが、ここで「安静」に対する潜在効果も紹介しておこうと思います。
- 回復と回復のために利用する代謝資源の節約
- 筋酸素消費量の軽減:より多くの酸素を必要とする損傷組織や臓器への酸素運搬
- 換気需要の軽減:人工呼吸器関連肺損傷のリスク減少
- 高いFIO2の必要性の減少:酸素毒性の減少
- 中枢神経系への血流の改善
- 転倒リスクの軽減
- 心臓へのストレス減少:虚血や不整脈の予防
- 損傷している身体の部分への痛みと追加の損傷の回避
離床を優先してしまわず、目の前の患者さんにとって今何が必要なのかをしっかりと考え、多職種と連携をとることで安静か、離床を進めるかを明確にする必要がありますね。
では、早期離床を進めていいかどうかはどう判断するのでしょう?
ICUで早期離床や早期からの積極的な運動を原則行うべきでないと思われる場合
一応、判断の参考となるものがあります。このように表現している理由として、ICUでの早期離床や早期からの積極的な運動の禁忌について、統一された基準が現段階ではないのです。また、ICUでは基礎疾患の病状が急激に変化する場合もあり、集中治療自体も刻々と変化するため、早期離床や早期からの積極的な運動の実施は伸張に判断する必要があります。
そのため、「思われる」という書き方なのです。現段階で考えらえる「早期離床、早期からの積極的な運動を行うべきでない」場合を紹介します!
- 担当医の許可がない場合
- 過度に興奮して必要な安静や従命行為が得られない場合(RASS≧2)
- 運動に強力の得られない重篤な覚醒障害(RASS≦-3)
- 不安定な循環動態で、IABPなどの補助循環を必要とする場合
- 強心昇圧薬を大量に投与しても、血圧が低すぎる場合
- 体位を変えただけで血圧が大きく変動する場合
- 切迫破裂の危険性がある未治療の動脈瘤がある場合
- コントロール不良の疼痛がある場合
- コントロール不良の頭蓋内圧亢進(≧20mmHg)がある場合
- 頭部損傷や頸部損傷の不安定期
- 固定の悪い骨折がある場合
- 活動性出血がある場合
- カテーテルや点滴ラインの固定が不十分な場合や十分な長さが確保できない場合で、早期離床や早期からの積極的な運動により事故抜去が生じる可能性が高い場合
- 離床に際し、安全性を確保するためのスタッフが揃わないとき
- 本人または家族の同意が得られない場合
数が多いですね(-_-;)
覚えられれば覚えたほうがいいですが、絶対に無理だという方は次へ進んでみましょう!(見終わって続きが気になる人も次へ進みましょう)
早期離床や早期からの積極的な運動の開始基準
こちらは基準としてまとめられています。先行論文を参考に、日本の現状を加味されたものになっております!
- 意識:-2≦RASS≦1;30分以内に鎮静が必要であった不穏はない
- 疼痛:NRS・VAS≦3, BPS≦5, CPOT≦2
- 呼吸:呼吸数<35/minが一定時間持続, SaO2≧90%が一定時間持続, FIO2<0.6
- 人工呼吸器:呼気終末陽圧(PEEP):<10cmH20
- 循環:心拍数 50/min≦HR≦120/minが一定時間持続, 新たな重症不整脈の出現がない, 平均血圧(MAP)≧65mmHgが一定時間持続, ドパミンやノルアドレナリンの投与量が24時間以内に増量がない
- その他
- ショックに対する治療が施され、病態が安定している
- SATならびにSBTが行われている
- 出血傾向がない
- 動くときに危険となるラインがない
- 頭蓋内圧(intracranial pressure, ICP)<20cmH2O
- 患者または患者家族の同意がある
こちらの方が数は少ないので覚えるならこちらですかね!
治療の安全基準
さらに、理学療法中に注意すべき点がこちら!
絶対禁忌(レベルⅠ)
心拍
- 最新の心筋虚血
- HR<40/min と >130/min
血圧
- MAP<60mmHgと>110mmHg
SaO2
- 90%以下
換気指標
- FIO2:0.6以上
- PEEP:10cmH2O以上
呼吸数
- 40/min
意識レベル
- RASS:-4, -5, 3, 4
強心薬
体温
- ≧38.5℃
- ≦36℃
相対禁忌(レベル3か4)
臨床的視点
- 意識レベルの低下
- 発汗
- 異常な顔色
- 痛み
- 疲労感
不安定な骨折
動くときに危険となるラインがある
神経学的に不安定:ICP≧20cmH2O
基準を遵守して実施した場合でも、安静を必要とする呼吸循環動態の急激な変動が生じる可能性が0~16%程度認められているのです。
そのため、上記の開始基準に該当していたとしても、理学療法実施中の呼吸回数、酸素飽和度、心拍数および血圧などは常に観察しておきましょう!
ICUでの早期離床と早期からの積極的な運動の中止基準
リハビリの中止基準があって、ICUでの中止基準がないなんてことはもちろんありませんよ!(こんなに長くなると思わなかった僕...ちょっと後悔してる(笑))
さて、中止基準ですがかなりの量がありました。
それは、ICUで使用されるデバイスの量が多く、そのデバイスに応じた問題や安全項目があるためです!
ここでは紹介しきれないのと、僕の疲れもピークに近づいているため、簡単に書けそうなものだけこちらで紹介します。すいませんorz。
参考文献は下部に載せてありますので、気になる方はご参照ください!
早期リハビリテーション実施中の中止基準(Adler 2012)
1)呼吸状態(指標)
呼吸数<5/min, >40/min
SpO2<88~90%, 4%の低下
人工呼吸器の場合
FIO2≧60%, PEEP≧10cmH2O, 人工換気の不同調, assist controlに設定が変更, 気道管理が不十分
2)循環動態(指標)
HR≧予測最大HRの70%, <40/min, >130/min, 安静時の心拍数の20%低下
新しい不整脈の出現
抗不整脈の新規投与
新規の心筋虚血
収縮期血圧>180mmHg
起立性低血圧(収縮期拡張期血圧の20%低下)
MAP<65mmHg, >100mmHg
3)意識自覚症状(指標)
鎮静レベルがRASS≦-3
鎮静薬の増量、新規投与でRASS>2
労作時の呼吸困難感
患者の拒否
端座位の制限基準
McWilliamsらによる、端坐位の制限基準というものもありましたので、紹介します。
端座位は最初に行われる抗重力姿勢であり、基本動作としても重要な姿勢になります。保持できるよう介入をすすめたいところですが、基準をしっかりと見定めて介入しましょう!
排除基準
- 血行動態の安定(MAP>60mmHg)のための血管作用薬の著明な使用(ノルアドレナリン>0.2μg/kg/min)
- 人工呼吸器のFIO2:>0.8もしくはPEEP>12cmH2O, 急性の呼吸状態の悪化
- 筋弛緩薬の使用
- CVAやSAHなどの急性神経学的のイベント
- 運動に禁忌事項になる脊柱の不安定や四肢の骨折
- 活動性の出血
端座位への制限
- 血行動態の安定(MAP>60mmHg)のための血管作用薬の少量の使用(ノルアドレナリン0.1~0.2μg/kg/min)
- 人工呼吸器のFIO2:>0.6もしくはPEEP>10cmH2O
- 気管チューブの弱い耐久性
- 開腹もしくは離開のリスクが高い
- 血液透析用の大腿部のライン
これでICUは以上ですね!
離床について(離床学会編)
今回ここを一番推したかったのになんかもうお腹いっぱい感半端ないですよね(笑) 僕ももういいよって感じです(笑)
だけど、頑張って紹介しますよ!
日本離床学会という学会を皆さんはご存知ですか?離床に関する内容を専門にした学会なんですけど(そのまんまやないかい)、この学会で離床マニュアルという教科書が作られているんですが、新人さんや幅広い範囲をまずは知っておきたいという方にオススメなので紹介したいんです!
幅広く扱っているので、この部分をもっと深めたいと思ったら、専門の教科書を買って勉強する必要があります。
今回は、この中にある離床基準を紹介します!
これまで見てきた中止基準と被るところもありますが、参考までに。
離床の開始基準
離床を行わない方がよい場合
- 安静時の心拍数が50回/分以下 または 120回/分以上
- 安静時の収縮期血圧が80mmHg以下(心原性ショックの状態)
- 安静時の収縮期血圧が200mmHg以上 または 拡張期血圧120mmHg以上
- 安静時より危険な不整脈が出現している(Lown分類4B以上の心室性期外収縮、ショートラン、RonT、モビッツⅡ型ブロック、完全房室ブロック)
- 安静時より異常呼吸が見られる(異常呼吸パターンを伴う10回/分以下の徐呼吸 40回/分以上の頻呼吸)
- P/F比(PaO2/FIO2)が200以下の重症呼吸不全
- 安静時の疼痛・倦怠感がVAS 7 以上
- 38度以上の発熱
- 神経症状の増悪が見られる
- 意識障害の進行が見られる
離床の中止基準
離床を中断し、再評価したほうが良い場合
- 脈拍が140回/分を超えたとき(瞬間的に越えた場合は除く)
- 収縮期血圧に30±10mmHg以上の変動がみられたとき
- 危険な不整脈が出現したとき(Lown分類4B以上の心室性期外収縮、ショートラン、RonT、モビッツⅡ型ブロック、完全房室ブロック)
- SpO2が90%以下になったとき(瞬間的に低下した場合は除く)
- 息切れ・倦怠感が修正ボルグスケールで7以上になったとき
- 体動で疼痛がVAS 7 以上に増強したとき
これらも参考にしながら、離床を進めていきましょう!
いかがでしょうか。
かなりボリューミーな内容になっているかと思います。
情報量が多すぎてどれを参考にすべきか悩んでしまうかもしれませんが、経験則だけでなく、これらの基準も参考にしながら臨床を進めていきましょう!
参考文献
1)前田真治:リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン.第44回日本リハビリテーション医学会,2007,44;384-390.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/44/7/44_7_384/_pdf
2)日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会:集中治療における早期リハビリテーション~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~.日集中医誌,2017,24:255-303.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/24/2/24_24_255/_pdf/-char/ja
3)日本離床学会:寝たきりゼロへ進化中 実践!離床完全マニュアル2