理学療法におけるバイアス
以前、バイアスについて少し紹介をしました↓
今回は、理学療法におけるバイアスについて紹介します。
目次
臨床推論
参考にしている本のバイアスの表に「臨床推論におけるアイアスおよび経験則的な失敗の例」と表題が書いてあります。
今回もバイアスの内容と失敗例を紹介しますが、そもそも臨床推論とは?というところから、簡単に解説しようと思います。
臨床推論は「クリニカルリーズニング」ともいわれます。
リーズン(reason)には、
わけ、(背後の)理由、根拠、推理、分別、理屈などの意味
があります。
リーズニング(reasoning)は、
根拠をもって理由づけること
という意味があります。
そして、臨床推論の概念として
対象者の訴えや症状から病態を推測し、対象者に最も適した介入を決定していく一連の心理(認知)的過程
を指します。
簡単に言うとトップダウン型のアプローチですね!
学生が実習で行うのはボトムアップ型になります。
これは、様々な評価を一通り実施して、そこから何が問題なのかを見つけるもの。
それに対しトップダウン型は、対象者の訴えや病態から必要な評価項目を取捨選択してアプローチをするというものです。
もちろん、評価してアプローチして、それでまだ不十分だったら再評価をしてアプローチを実施します。
評価とアプローチを繰り返し実施していく形ですね!
臨床で行われるのは主にこちらのトップダウン型でしょう。
ざっくりとですが、これが臨床推論です。
今回話したい内容はこれではないので、簡単に終わらせてしまいます。
バイアスの種類と内容
ここからバイアスと失敗の例などを紹介していこうと思います。
確信バイアス
以前のバイアスの記事にて自己確証バイアスを紹介しましtが、それと同じようなものです。
以前に抱いた特定のアウトカムへの期待に基づいて臨床家が結論を導いているときに生じます。
例えば、ある女性が以前から仕事の不満を訴えていたため、腰痛経験を大げさに考えていると、理学療法士が決めつけているといった感じですね。
このような決めつけは日常でも行ってしまいがちですが、このように無意識に判断してしまうと、誤ったアプローチを行ってしまいがちです。
このような場合の失敗例として、理g九療法士は女性の腰椎の関節制限を特定する臨床検査の手続きをしないという場合が考えられます。
もちろん、腰痛がある場合はまずは局所の問題を把握すべきです。
しかし、「以前から仕事の不満を訴えていた」という点に着目してしまい、精神的なものだろうと自分の中で判断してしまうこともあります。
腰痛は肉体的な問題だけでなく、精神的な問題でも起こり得るものです。
決めつけはしないよう、考えられる問題を考え、評価することが大事です。
また、評価するうえでは問診も重要です。
問診は一番初めに、多くの時間を取って行うべき評価です。
問診によって
- どのような生活をおくっているか
- 発症時期
- 疼痛の程度
- 増悪時期はあったか
- どのようなときに痛むか
など、様々な情報を得ることができます。
ここでしっかり患者の背景を知ることが肝心です。
臨床でもしっかりと意識して行いましょう。
※日常でも友人や家族などとしっかりとコミュニケーションをとりましょう。
決めつけで話すことはやめましょうね。
検証バイアス
これは、臨床家が仮説を検証する情報に対して選択的に焦点を当てるときに生じます。
例えば、超音波療法で改善した肩に癒着性関節包炎のある患者だけ覚えていて、それと同じ手法で改善しなかった同疾患の患者を忘れているという場合です。
以前のバイアスの記事でいうところの、正常性バイアスですね!
自分にとって都合の悪い情報をスルーしている状態。これもよくないです。
患者一人一人によって症状は異なります。一人良くなったアプローチがあったから同じアプローチも適応するとは限りません。
この場合に起こる失敗として、物理療法に対する患者の反応に関係なく、すべての肩の癒着性関節包炎の患者へ超音波療法を適応することになってしまいます。
アプローチをしたら評価が大事です。
アプローチ前後で評価をし、良くなっているのであれば続けるべきですが、あまり変化が見られない場合は他のアプローチを検討しましょう!
評価、しっかりやりましょう!
親近性効果
これは特徴的な患者の症状や反応は覚えやすいので、それらが一般的な現象であると臨床家が思い込むときに生じるバイアスです。
例えば、線維性筋痛症の診断を受けた、最後に担当した2人の患者が男性だったため、線維筋痛症は女性よりも男性のほうが一般的だと理学療法士が思い込むようなことです。
ちょっと例えが酷いですよね(笑)
ちなみに日本での線維性筋痛症の男女比は 1:1.3 となっており、女性が多いです。
しかし、欧米での男女は 1:8~9 とかなり女性に多い傾向となっておりますが、日本と欧米で差が生じている理由は不明らしいです。
余談が入ってしまいましたね。
これも失敗例が酷いのですが、上背部に全体的な痛みをもつすべての男性を線維筋痛症患者に分類すると書かれています。
さすがにそんなことはないと思いますがね(笑)
けど、似たようなことは僕も経験があります。
こういう疾患てこんな人が多いよな~って思うことありませんか?
実際に疾患や病態でこういうアプローチが効いていると感じたら、実際に評価してみたり、患者さんに聞いて主観的な効果はどうなのか見てみるのはいいのかもしれません。
判断したら判断しっぱなしで個人的解釈で終わらせないようにしましょう!
他の場合として、特徴的な患者の症状や反応は覚えにくいので、それらは一般的な症状でないと臨床家が思い込む場合です。
例として、新卒の理学療法士は、皮節性パターンに現れる痛みの様々な原因をどのように区別すべきか覚えていない場合です。
僕もまだ臨床でわからないことは多く経験しています。なんでここが痛いんだろう、なんでこの動きが出せないんだなどなど、悩むことがたくさんあります。
そこで様々な原因を考えて評価したり、調べてみることがとても重要です。
この場合の失敗例として、特発性急性症状を持つ人において帯状疱疹による神経根痛が原因の痛みを、椎体関節の制限が原因の痛みであると理学療法士が誤解する場合です。
この例を用いて話を進めると、痛みにも様々な種類があります。
筋が痛いのか、皮膚が痛いのか。はたまた筋性ではなく神経系の影響なのか。
痛みだけでも様々な原因があります。
最初の方にも述べましたが、どこが原因なのか問診して確認していくことがとても重要です。
僕らが優先ではなく、患者さん優先です。
しっかりと患者さんの声を聴きましょう!
代表的排他性
これは予定した治療セッションで回復した患者だけに基づき、症状や反応について臨床家が結論を導くときに生じるバイアスです。
例えば、一連の治療を終えていないパーキンソン病患者と比べた、治療を終えた患者の経験から、ある特定のバランスプログラムがすべてのパーキンソン病患者のためになると理学療法士が思い込むことが挙げられます。
パーキンソン病は病期によってアプローチが変わります。なので全てのパーキンソン病患者に有効なバランスプログラムはありません。
結果的に起こる失敗例として、バランス管理のために紹介されたすべてのパーキンソン病患者に対して、まったく同じ方法でバランスプログラムを適用するということになりかねません。
しっかりと病態を把握することも、プログラムを考える上では重要です。
同じことを言うようですが、疾患ではなく、しっかりと患者さんを見ましょう!
価値バイアス
臨床家の目からみたアウトカムの重要性がアウトカム発生の可能性をゆがめるときに生じるのがこのバイアスです。
ちょっとよくわかりませんね(僕だけでしょうか?(-_-;))
例として、急性期の有痛性状態における診断未確定の骨折についての理学療法の関心は、特定の状況下における骨折の罹患率に関するデータよりさらに強くなるというものです。
失敗例としては、検証された臨床的予測ルールを使わず、急性の有痛性状態にある全ての人に対してX線検査を紹介するというものです。
これ、アメリカの本なのでX線検査を紹介とあるのでしょうかね。
日本では行いませんしね。僕は聞いたことないです。
今回は臨床推論におけるバイアスを紹介しました。
価値バイアスについては自分の理解が不十分なので分かり次第もっとわかりやすく例を挙げて書ければと思っております。
今回はこの辺で!
ではでは✋
参考文献