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根拠に基づく理学療法の実践に向けて

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 今回もエビデンス関連の記事です。

 ここでは根拠に基づく理学療法の実践 evidenced-based physical therapist ractice(EBPT)を紹介します。

 

目次

 

定義

 まずEBPTの定義として

根拠に基づく理学療法の実践は、患者/利用者/被検者のアウトカム、およびQOLを最適化するために、"臨床判断を伴った最も利用可能なエビデンス"と、患者/利用者/被検者の希望、および価値観を統合し、また、理学療法サービスが提供されているより大きな社会的文脈が考慮された、患者/利用者/被検者の理学療法マネジメントについての"開放的な思慮深い臨床的な意思決定"である。 

 とされています。

 まず求められているのは「エビデンス」ですよね!

 これは欠かせないと思います。

 患者や利用者に変化を与えなければなりませんので、効果的な介入が求められるのは当然ですよね。

 その中でも「最も利用可能なエビデンス」というところに注目してみましょう!

 これは理学療法士が患者/利用者マネジメントを行ううえで理学療法士がもつ疑問に関連した、最新で、慎重に設計された研究を意味しています。

 

 

 そして、エビデンスだけではありません。

 定義を見ると「患者/利用者/被検者の希望、価値観を統合し」とありますね。

 いくらエビデンスがあるからといってその方法を強要し、患者が求めていないことをやらせるのはよくありません。

 患者さんには患者さん、利用者さんには利用者さんの人生とこれまでの経験で培ってきた価値観があります。

 その人らしく生きられるよう希望や価値観に沿った介入を行うことも必要です。

 その点が、理学療法の特殊性なのではないでしょうかね。

 

 「大きな社会的文脈」というのは

 ヘルスケアサービスの提供や支払いの管理に関する規律を含んだ、社会的、文化的、経済的、政策的影響を意味しています。

 

 最後に「開放的な思慮深い臨床的な意思決定」とありますね。

 「開放的」という用語には

  1. 結論にたどりつくまでにとられた手順
  2. 根底にある理論的根拠
  3. 行為の実行、および拒否による背泣いてきな影響

を含んでいます。

 

 「思慮深い臨床的な意思決定」は

 倫理、標準的なケア、および法的あるいは規制への配慮を含んだ専門的な文脈における、さまざまな選択に関する理学療法士におけるリスクと便益の評価を意味しています。

 

EBPTの過程

 これには様々な要因に依存します。

 最初に、何がわからないのか認識するために、患者/利用者/被検者の状態について十分な知識を必要とします。

 それに加えて、どの情報はエビデンスが強く、どの情報はエビデンスが弱いかというエビデンスの評価の過程に関する知識を身につけるか、あるいはそれにアクセスしなければなりません。

 そして、雑誌やオンラインなどからエビデンスにアクセスします。

 そこからエビデンスを評価したり、実践にエビデンスを統合したりするために検索する時間を必要とします。

 

 Jetteらが行った調査によると、EBPTに必要ないくつかの特徴はその実行が妨げられていることを示唆しています。

 それによると、大半の回答者(n=488)はエビデンスが実践に必要でケアの質を改善させると確信しているが、対象者の67%はEBPTの実践の3つの障壁のうち第1位を”不十分な時間”としています。

 僕は急性期病院に勤務しておりますが、1日に見る患者数は8~10人程度です。

 多いかどうかは定かではありませんが、患者数が多いとそれだけ調べる回数も多くなるため、時間が足りないというのも一理ありますね。

 また、臨床業務が終わってカルテを入力してから調べようと思っても、業務だけで手一杯になってしまいますよね。

 

 また、効果的な検索戦略を実行する能力、エビデンスを評価する能力、オッズ比や信頼区間といた用語が使われている結果を解釈する自己評価が低いことも示されています。

 

 エビデンスを調べることはもちろん重要です。

 しかし、このような状況がある中でやるべきなのは「エビデンスを調べる十分な時間」を確保することではないでしょうか。

 これは単独で行えるものではないと思います。

 忙しい病院や施設ではリハ科全体で取り組むべき課題でもあると思います。

 大変なのはもちろんですが、患者/利用者中心の医療を行っていくのであれば、時間を調節するマネジメント面を改善することが必要かと思います。 

 業務を効率化させ、時間を作り、エビデンスに基づいた介入をする。

 この形を作っていくことがまずは必要なのではないでしょうか。

 

 エビデンスに関する情報を随時更新していこうと思います。

 

参考文献

ダイアン・V・ジュエル:理学療法エビデンス大事典 現場で使える実践ガイド