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よく聞くけど奥が深い!?バランスについて

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 みなさん、「バランス」って聞いたことありますか?

 一度は聞いたことがあると思います。

 これは医療従事者やスポーツ関係者だけでなく、一般でも、子供でも使いますよね。

 

 では、「バランス」の定義はわかりますか?

 バランスって何が原因で悪くなるの?

 バランス感覚と平衡感覚って違うの?

 

 これは難しいのではないでしょうか。

 

 リハビリ職として働いている自分も、どこが原因でふらついたりしているのか、はっきりしないことがあります。

 

 自分の復習も含めて、みなさんにもっとバランスのことを知ってもらうためにまとめようと思います。

 

目次

バランスと平衡

 そもそも、この2つの言葉は違うのかどうかという転ですよね。

 似ている、一緒だろうという意見もあると思います。

 

 そこでまず、みんな大好きwikipedia大先生に聞いてみました。

 まずはバランス。

英語で釣り合い、均衡の意。

 はい、「平衡」という言葉は出てきませんでした。

 やっぱり違うのでしょうか?

 では次に、平衡を見てみましょう。

物が釣り合って安定していること、あるいはその釣り合い。

 そして、このような文もありました。

balanceおよびequilibrium(平衡である状況のこと)は「平衡」の他に「均衡」とも訳される。

 そうです。

 

 世間一般的には、バランスも平衡も同じような解釈でよろしいのかなと思います。

 

 がしかし。

 

 ここでは少し分けて考えてみようと思います。

 

 実は「平衡」には多くの分野において意味が生じます。

 実に11種類。

 これらの詳細は省きますが(もちろんわかりませんので)、今回紹介する内容にもっとも近い生理学を参照します。

 

生理学においては、水平であることを認知することを指す。

 としています。

 

 平均台の上で両手を横に広げてバランスを取っている状態は「水平を認知している」状態と言えますね。

 

 そして、「バランス」というのは、後述しますが、多くの要因によって障害が起こります。

 

 バランスと平衡は以下のように、使い方を分けることが可能です。

 

バランス

平衡機能

意味

多くの要因で占める割合

左右対称性や天秤の釣り合いを意味する言葉

使用

特に限定されているものはなく、何気なく抽象的な言葉でよく、使用される。

合目的に対する帰結からその出来高を表現する時に使われやすい。

環境中でどのように動作が上手にできるか。

前庭機能からの均衡や、身体正中位保持・左右対称性を話題とする場合に使用される。

耳鼻科領域としては、好んで使用される。

感覚障害、筋力低下が原因の場合には、平衡障害とは呼ばれない。

 特に注目すべきは

  • 平衡:身体正中位の保持や左右対称性を話題とする場合
  • 平衡機能:制定姿勢保持や外乱応答などの姿勢を維持するために必要な神経系の機構
  • バランス:環境の中でどのように動作を上手にするか、目的に対する帰結からその出来高
  • バランスの機能面:平衡機能を加えて、骨アライメント、関節機能、筋力などの要素が含まれた動作遂行性

 とされます。

 

バランスとは?

 まず、バランスの定義についてですね!

 Shumway-CookやWoollacottらによると

バランスは、身体重心の投影点を安定性限界(stability limits)と呼ばれる支持基底面内の範囲内に保持する能力 

 と言っています。

 また、内山によると

バランスとは、重力をはじめとする環境に対する生態の情報処理機能の帰結・現象。

支持基底面内に重力を投影するために必要な平衡にかかわる機能に加えて、骨のアライメント、関節機能、筋力などの要素がある。

 とされています。

 どちらも難しいですね。

 前者は生体力学的な定義であり、後者はそれに加えて、環境との関わりやシステムとしてバランス能力を捉える視点が加わっています。

 

 前者の支持基底面や安定性限界という言葉は聴きなじみのない方もいると思います。

 わかる人にはわかると思いますが、絵でまとめようと思います。

  その前に、まず重心について!

 

身体重心

 身体重心がどこにあるのかを見極める方法があります。

  1. 上半身重心:第7~9胸椎
  2. 身体重心 :上半身重心と下半身重心の中点
  3. 下半身重心:大腿の1/2と近位1/3の中点

 下半身重心の位置はちょっと複雑ですよね。

 まず、大腿部を2等分と3等分に分けます。

 二等分に分けた点と、3等分に分けた点の股関節に近い点のちょうど真ん中が下半身重心です!

 覚えてほしいのは、まず上半身重心と、下半身重心の場所です!

 それを見極めてからでないと、身体重心の場所は割り当てられません。

 

 簡単に、座っている人の身体重心の場所を見つけましょう。

 まずは上半身重心から!

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 おおよそこのあたりでしょうか。

 続いて、下半身重心を探しましょう。

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 大腿部を短く書いてしまったので細かく点で出せませんでしたが、おおよそこのあたりですね!

 注意しなければいけないのは、左右の脚の下半身重心を出したら、その真ん中にくるようにします。

 重心なので、左右どちらかに偏っていることは基本ありません。

 さあ、これで身体重心の場所を特定できますね!

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 上半身重心と下半身重心のちょうど間!

 この黄色い点がこの絵の身体重心です!

 ちなみに、身体重心はCOG(center of gravity)と表記されることもあります。

 また、静止している場合は、身体重心は後述する支持基底面や安定性限界におさまっています。


支持基底面と安定性限界

 まずは、支持基底面と安定性限界について紹介しようと思います。

体重を支えるための面のこと。

 

 続いて、安定性限界について!

身体がその支持基底面を変化させることなく自分自身の位置を保持できる限界のこと。

 とされています。

 この文章だと、支持基底面と安定性限界がどう違うのかよくわかりませんよね。

 もう少し詳細に書くと、安定性限界は

支持基底面の中で実際に重心を移動できる範囲で、姿勢を保てる生理的限界に相当する。

 とされています。

 立位時の支持基底面と安定性限界を絵で書くとこのような感じです。

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 左右の青が足部、グレーが支持基底面です。

 支持基底面には青の足部も該当します。

 そして、赤が安定性限界です。

 支持基底面の中に安定性限界があると思っていただければ大丈夫です。

 この安定性限界が小さくなるためにバランス障害が起こる疾患や、身体重心動揺が大きいためにバランス障害が起こる疾患があります。

 

 バランスの良い状態というのは

身体重心が安定性限界の中央付近に位置して動揺が少ない状態

 といえます。

 

 重心の求め方と支持基底面が理解できれば、器械体操の床の演技の倒立のような、一見どうやってバランスをとっているんだろう?と思うようなことでも、しっかりと支持基底面に身体重心が乗っているのがわかります。

 

バランスの構成要素

 さて、バランスが良い状態は先ほど紹介しました。

 では、バランスをとるための構成要素にはどのようなものがあるのでしょうか。

 実はかなり多いです。

 こちらをご覧ください。

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 画像は望月4)の文献から引っ張ってきたものなのですが、バランスというのは、

  • バランス能力
  • 動作課題
  • 環境

 によって変化する、複合的な身体機能なのです。

 

 

 気がついたら、かなりの文字数になっていたので、今回はここでおわりにしようと思います。

 次回は、バランス能力のそれぞれの要素を解説できればと思います。

 ではでは。

 

参考文献

1)ウィキペディア バランス https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9

2)ウィキペディア 平衡 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E8%A1%A1

3)西守隆:バランスの評価.関西理学療法.2003.3:41-47.

4)望月久:バランス障害に対する理学療法理学療法学.2013.40(4).322-325.