インスリンについて
前回は2連続膵臓について紹介しました。
今回はインスリンについて紹介します。
目次
インスリンとは
細かく紹介すると
21個のアミノ酸からなるA鎖と30個のアミノ酸からなるB鎖が、ジスルフィド結合で2ヵ所架橋されたペプチドホルモンで、ランゲルハンス島のβ細胞から分泌される
ランゲルハンス島やβ細胞(B細胞)は前回紹介したのでそちらを参照してください。
インスリンは食物を摂取して、体内に余剰の栄養が存在するときに、それを各種の臓器に貯蔵する方向に働きます。
この貯蔵が血糖降下につながります。
つまり、血液中の糖分を脂肪などに変換しているのです。
そして、以前から言っていますが、血糖降下に働くのはインスリンしかありません。
血糖を上げるホルモンは幾つか存在します。
参考として
が血糖を上げるホルモンとなっています。
なぜこんなに血糖を上げるホルモンと下げるホルモンの数が違うのか。
それは、過去に目を向けるとわかるかもしれません。
はるか昔、ヒトが狩りをしていた頃まで戻るとわかりやすいと思います。
その頃は食物を手に入れるのが大変でした。
食物が手に入らないと栄養分がないため、血糖も下がってしまいます。
それを防ぐために血糖を上げられるホルモンが必要だったのだと思います。
昔は血糖を下げるより、血糖を上げることのほうが大切だったのです。
そのため、生体は高血糖よりも、低血糖に対して防御するように進化してきた結果と考えられます。
今はスナック菓子やスイーツなど高カロリーなものがたくさんあり、むしろ過剰摂取しているような状態です。
インスリンの分泌
そもそもインスリンはどのように分泌されるのか。
分泌を起こす因子として最も重要な生理刺激は血中グルコース濃度の上昇です。
次いで、アミノ酸、グルカゴンなどが促進因子となっています。
また、アミン類やソマトスタチンが抑制因子として注目されており、自律神経系によっても分泌が調節されています。
作用
摂食などで血糖値が上昇すると、インスリンが分泌されます。
これは上でも書きましたね。
インスリンは肝臓や筋肉に働いて、グリコーゲンの分解を抑制し、グルコースの取り込みを促進、血糖降下に働きます。
またタンパク質の合成を促進し、分解を抑制します。
さらに肝臓や脂肪組織の脂質の合成を促進し、分解を抑制します。
脂質の合成を促進するのはなんとなくわかるのではないでしょうか。
甘いものを食べている人は太っていますよね。
あれは、インスリンによって脂肪組織の脂質の合成が促進されている状態です。
運動することで、脂質はエネルギーに変換されるために分解が亢進され、痩せていきます。
色々と出てきてわかりにくくなった方もいると思います。
グリコーゲンとグルコース、どっちがどうなの?と思うところがあるのではないでしょうか。
グリコーゲンとグルコースについて
ここで簡単に紹介します。
グリコーゲン、グルコース共に炭水化物に含まれます。
しかし、炭水化物にも種類があります。
- 単糖類:3~7個の炭素原子を含む単純糖
- 二糖類:2つの単糖類が脱水縮合により結合した単純糖
- 多糖類:数十~数百の単糖類が脱水縮合により形成
そして、グルコースは単糖類、グリコーゲンは多糖類に分類されます。
上を見ると単糖類より多糖類の方が大きいことがわかります。
つまり、グリコーゲンを分解していくと二糖類になり、二糖類を分解すると単糖類になります。
体内の細胞はグルコースを分解してエネルギーを産生します。
血中グルコースレベルが下がると、肝細胞はグリコーゲンをグルコースに分解して血中に放出する能力があります。
流れとしては、グルコースは体内の細胞に供給され、細胞はこのグルコースを分解してエネルギーを産生します。
さて、ここでもう一度インスリンの作用を思い出しましょう。
インスリンは肝臓や筋肉に働いて、グリコーゲンの分解を抑制し、グルコースの取り込みを促進、血糖降下に働きます。
まず、グリコーゲンの分解を抑制するということは、グルコースが生成されなくなります。
そして、グルコースを取り込むことで、血中グルコース濃度は低下、つまり血糖が下がるという結果になります。
そして、このインスリンの量が不足したり、筋肉や肝臓のインスリンに対する抵抗性が上がると、糖尿病になります。
参考文献
1)岩本義輝,尾崎繁,他;照井直人(編):はじめの一歩のイラスト生理学 改訂第2版.羊土社,2012,東京都.