高血圧症について
誰もが一度は聞いたことがある高血圧症について。
高血圧症は、動脈硬化の重要な促進因子となり、動脈硬化に起因する全身性の臓器障害の重要なリスク因子です。
高血圧症による各種臓器障害の終末として、脳血管疾患や心大血管疾患、腎疾患などが挙げられます。
なじみのある言葉だし~と気を抜いていると後々大変なことになりますよ。
今回はこちら↓の論文を中心に説明していきます。
笠原酉介,井澤和大,他:高血圧症合併者に対する理学療法.理学療法学,2013,40(6):p429~437.
目次
高血圧症とは
高血圧症とは、体循環系の血圧が上昇した状態を示し、その罹患率は高率です。
- 日本で約4300万人の高血圧者数と推定1)
- 原因があきらかなもの(二次性高血圧症)は2~5%
- 原因があきらかでないもの(本態性高血圧症)は90%以上
とされています。
高血圧に起因する死亡者数は年間約10万人と推定され、喫煙に次いで多い1)とされています。
高血圧症の基準は、
となっています。
なお、血圧値にはこのような分類があります。
分類 |
|
||
至適血圧 |
<120 |
かつ |
<80 |
正常血圧 |
<130 |
かつ |
<85 |
正常高値血圧 |
130~139 |
または |
85~89 |
Ⅰ度高血圧 |
140~159 |
または |
90~99 |
Ⅱ度高血圧 |
160~179 |
または |
100~109 |
Ⅲ度高血圧 |
≧180 |
または |
≧110 |
(孤立性)収縮期高血圧 |
≧140 |
かつ |
<90 |
かなり細かく分類されてます。
念のため説明しますが、収縮期血圧と拡張期血圧の間の「かつ」と「または」に関して、
「かつ」:どちらも当てはまっている場合に該当
「または」:どちらかが当てはまっていれば該当 となります。
上記の分類の至適血圧が、もっとも心血管病の累積死亡率が低いです。
また、収縮期血圧110~115mmHg、拡張期血圧70~75mmHgより高い場合には、直線的に心血管病の発症リスクが高まることがあきらかにされています。
- 心血管病死亡の約50%
- 脳卒中罹患の50%以上
が、至適血圧を超える血圧高値に起因するものと推定されています1)。
高血圧レベル分類が進展するほど、心大血管疾患、脳血管疾患に代表される動脈硬化性疾患の発症率が高まります。
身体にどんなことが起こるの?
◎身体へのダメージ
高血圧症は強力な心血管疾患のリスク因子です。
高血圧じゃない人に比べて
- 男性:2.2倍
- 女性:2.5倍 に発症率が増加するといわれています。
他、各種臓器におこる障害を以下に示します。
- 脳:脳梗塞、脳出血、無症候性脳血管障害、認知機能障害
- 心臓:左室肥大、心房細動、狭心症、心不全
- 腎臓:慢性腎疾患、腎不全
- 血管:動脈硬化性プラーク、大血管疾患(大動脈瘤、大動脈解離)、閉塞性動脈硬化症
◎心大血管疾患
1)虚血性心疾患
心疾患の中でも頻度が高く、罹患者数は増加し続けています。
心筋酸素需要量と冠動脈から心筋への酸素供給量のバランスが崩れます。
つまり、心臓の筋肉に必要な酸素と血管から送られてくる酸素量が異なり、心臓の筋肉が酸素不足になってしまうのです。
虚血性心疾患の中には大きく分けて2種類の病気があります。
まず、狭心症です。
狭心症は、心筋酸素需要が相対的もしくは絶対的に酸素供給量を一時的に上回った状態です。
もう一つが心筋梗塞です。
心筋梗塞は、冠動脈の完全閉塞により灌流支配領域の心筋が壊死に至る病態です。
壊死した心筋が元に戻ることはありません。
2)高血圧性心不全
新規に発症した心不全患者のうちおよそ91%に高血圧症の既往があったとのことです。
心不全にも様々な種類がありますが、この場合、拡張能(心臓の拡がりやすさ)の障害により心機能が低下していることが多いです。
3)大血管疾患
ここでは、大動脈解離とについて説明します。
大動脈解離は、大動脈が中膜のレベルで二層に剥離した病態です。
およそ9割の患者で高血圧症の既往があります。
上行大動脈に解離が存在している場合、予後不良であり、緊急外科手術の適応となります。
◎脳血管疾患
代表的な動脈硬化性疾患です。
さらに、近年肥満を伴う高血圧者が増加しているとのことです1)。
タバコとどんな関係があるの?
喫煙により
- 心拍数増加
- 血圧上昇
- 一回および分時拍出量増加
- 心収縮速度上昇
- 心筋収縮力増加
- 心筋酸素消費量増加
- 冠血流量増加
- 自動性亢進
- 不整脈出現
- 末梢血管収縮
- 心電図上ST降下
- 脳血管拡張
などがあります2)。
心臓の動きが早くなり、送り出す血液が多くなり、末梢の血管が収縮することで、血圧は高くなります。
吸えば吸うほど、血圧は高くなり、脳卒中や循環器疾患にかかりやすくなります。
また、1本の紙巻きたばこを吸った場合、15分以上持続する血圧上昇を引き起こすことが示されています1)。
さらに、受動喫煙者は24時間血圧が高く、仮面高血圧も高頻度であるという報告もあります1)。
対策方法はないの?
高血圧症にならないために、ある程度症状を緩和させることは、予後をよくするためにも重要です。
そこで、高血圧治療ガイドライン2014の生活習慣の是正について、ご紹介します。
- 生活習慣の是正は、高血圧予防や降圧薬開始前のみならず、降圧薬開始後においても重要
- 減塩:食塩6g/日未満
- 食事パターン:野菜・果物を積極的に摂取し、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。魚の積極的摂取も推奨
- 減量:BMI 25kg/m2未満
- 運動:有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)行う
- 節酒
- 禁煙
- その他:防寒、情動ストレスの管理
- 複合的な生活習慣是正はより効果的
運動は効果的ですが注意があります。
バーベルやダンベルなどを持ち上げるときや、筋トレを行う場合、息こらえをしないようにしましょう。
息こらえをすることで血圧は上がります。
気を付けましょう。
今日はこの辺で。ではまた。
↓高血圧治療ガイドラインには、もっと詳しく様々な情報が書かれています。
ぜひご参照ください。
参考文献
1)高血圧治療ガイドライン2014
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014v1_1.pdf
2)大野良之:喫煙と循環器疾患.日本循環器管理研究協議会雑誌,1989,23(3):p136~141.