タバコと子どもとの関係性②
前回に引き続き、子どもと喫煙との関係性についてまとめていきます。
前回は発生期と周産期について紹介したので、今回は乳児期・幼児期からです。
目次
乳児期・幼児期
ここでは1歳から小学校入学までに起こりうる問題について紹介します。
誤飲
喫煙と関係あるの?って思いませんか?
僕もこれを初めて見たとき「え?」と思いました。
子どもはみんな、なんでも口に入れたがるものだと思ってました。
そのため、目を離さないようにしなければいけないため、大変なのだと思いますが...
日本中毒情報センターの0歳から5歳までの誤飲の受診件数をみると、化粧品およびタバコ関連商品が上位2つを占め、合わせて4割ほどを占めているそうです。
2011年の品目別では、
- 紙巻きたばこ:15%
- 基礎化粧品:6.3%
- 石鹸:2.9%
となっています。
タバコが圧倒的に高いですね。
乳幼児にとっては、親が口にくわえるタバコは食べ物のように感じてしまうのかもしれませんね。
もしタバコを誤飲すると、どうなるのか簡単に紹介します。
タバコ誤食後30分~4時間以内に
- 嘔気・嘔吐
- 下痢
- めまい
- 頻脈
- 顔面蒼白
- 不機嫌
重篤な場合は上記症状に続いて30分以内に
が起こります。
通常、嘔吐によりタバコを吐き出すので重篤な症状が起こることは稀です。
もし、誤食してしまった場合は吐かせましょう。
灯油の誤飲について
話しがすごく逸れますが、この日本中毒情報センターのホームページを見てみました。
すると、灯油の誤飲に注意という欄がありました。
冬になると灯油を使う家庭が増えるためか、灯油の問い合わせも増加するそうで、灯油ポンプの先をなめるなどの子どもの事故や、大人では飲料容器に移し替えていた灯油を誤飲する事故があったそうです。
飲料容器に灯油を移す発想は僕にはなかったですが、みなさんもやらないように!
灯油を少量でも誤嚥すると、化学性肺炎を起こす可能性があります。
ここで注意しなければいけないのは吐かせてはいけません。
飲んでしまったものを吐くと、逆に誤嚥リスクが高くなります。
誤嚥というのは、飲食物が食道ではなく、肺へ続く気管へと流れてしまうことをいいます。
そのため、もし灯油を誤飲してしまった場合でも
- 無理に吐かせない
- 水などを飲んで嘔吐を誘発しない
ようにしましょう。
そして、病院へ行きましょう。
虐待
日本小児科学会発行の子ども虐待診療手引き5によると、身体的虐待の9%に熱傷がありそのほとんどはタバコの火によるものだそうです。
前回の記事で、喫煙によって子どもがADHDになりやすいということを書きました。
出生前の要因として、母親の妊娠中の生活様式がADHDと関係しており、特に母親の喫煙に関するエビデンスが最も強いです。
また、周産期の要因に関しては、低出生体重児においてADHDの発現は2倍に増加すると報告されています。
幼児期のADHDの症状を挙げていきます。
- 不注意:ほとんどなく、むしろ好奇心旺盛な印象を大人に与える
- 多動性:じっとしていられず、動き回る傾向
- 衝動性:いきなり母親の手を振り切って駆けだす。遊具などの順番を待てない。邪魔な他児を突き飛ばす。物を取り上げる。
多動性や衝動性は問題児として見られるようなものでり、親の手をやきそうなものばかり。
そして、この衝動性や多動性は養育者の虐待的対応を誘発する可能性があります。
また、養育者は喫煙によりイライラしやすくなっている可能性もあります。
これらのことから、喫煙環境にある幼児はタバコによる熱傷が多いのかもしれませんね。
しかし、手を出すのはよくありませんので注意しましょう。
気管支炎・肺炎などの下気道感染症
親の喫煙と下気道の感染症は十分な相関があり、母親が喫煙すると危険性が増します。
生後18か月以内に肺炎などで入院する危険性は、正常体重児が受動喫煙を受けると1.6倍に増加するが、低出生体重児の場合には4.5倍にまで増加します。
幼児喘息
受動喫煙があると発症危険性が増すことが証明されています。
中耳炎
え、耳?って思いますよね。
実は、急性、反復性中耳炎と慢性滲出性中耳炎には親の喫煙と密接な関係があります。
中耳腔と鼻咽頭をつなぐ耳管の機能不全と、耳管開口部付近で感染が容易に起こるため、炎症が中耳におよびやすいことがいわれています。
本来、耳管は粘膜の繊毛運動によって清浄に保たれています。
この機能が落ちると病原体の侵入が起こりやすくなります。
また、受動喫煙により、耳管粘膜の腫脹が起こり耳管が狭くなります。
耳管が狭くなれば、内部をきれいに保つための排除機能は小さくなってしまい、より炎症が起きやすくなります。
補足ですが、受動喫煙時が発症する疾患や症状について簡単にまとめます。
- 知能低下、ADHD、化学物質過敏症、髄膜炎
- 中耳炎、難聴
- 嗅覚鈍麻、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎
- 虫歯、歯肉着色症、歯周病
- かぜをひきやすく長引く、慢性扁桃肥大、アデノイド増殖症、逆流性食道炎
- 呼吸機能低下、咳喘息、喘息、慢性気管支炎、急性気管支炎、喘息様気管支炎、急性細気管支炎、肺炎、肺結核
- 善玉コレステロール減少、動脈硬化
- アトピー性皮膚炎および重症化
- 悪性リンパ腫、がん、虫垂炎
- 低身長、ペルテス病
学童期
喘息
少年期の家庭内の受動喫煙は、喘息の重症化や肺機能低下に関連します。
また咳嗽・喀痰・喘鳴と息切れの原因となることや、喘息発作を起こしやすくなることが、多くの疫学調査で明らかにされています。
慢性呼吸器症状
主に咳や痰が続くというのが症状です。
最近、タバコ煙の中にPM2.5が含まれていると注目されています。
PM2.5は発がん性を有します。
大気汚染で問題に上がっていますが、家庭内でのPM2.5の最大の発生源はタバコです。
国際がん研究機関による発がん性分類があったのでこちらで紹介します。
グループ 1
発がん性 あり
アスベスト・喫煙
グループ 2A
発がん性 おそらくあり
筋肉増強剤(アナボリックステロイド)
グループ 2B
発がん性 可能性あり
クロロホルム、電磁波
グループ 3
発がん性 分類できない
コレステロール、カフェイン
グループ 4
発がん性 恐らくなし
カプロラクタム(ナイロン原料)
歯肉の着色
ビタミンCの崩壊によるメラニン色素の沈着により起こると考えられています。
いかがでしょうか。
ちょっと話が逸れる場面もありましたが、喫煙による影響は子どもが吸っていなくても、子どもの脳や耳にまで及びます。
次回は思春期の喫煙との関係性についてまとめます。
参考文献
1)野田隆:子どもとタバコにまつわる問題点.健康心理学研究,2016,28:p113~119.
2)日本中毒情報センター【たばこ】
3)日本中毒情報センター 灯油について
http://www.j-poison-ic.or.jp/homepage.nsf
4)王宝禮,渡部茂,他:タバコによる小児に対する影響ー歯科医師・歯科衛生士は禁煙支援の適任者ー.小児歯科学雑誌,2009,47(3):p419~426.