喫煙によって痛みを感じやすくなる?がんによる痛みについて②
前回に引き続き、喫煙とがんによる痛みについてです。
今回は、がんの治療に伴う痛みと喫煙についてまとめていきます。
目次
どれくらい発生するの?
そもそもこのがんに伴う痛み、がん関連痛がどれくらい発生するのかを説明していなかったですね(-_-;)
- がん治療中の患者の30~40%
- 進行した病期においては60~90%
に発生するといわれています。
進行すればするほど痛みが伴ってくるということですね。
がんの治療に伴う痛みと喫煙
がんの治療には、手術や放射線、化学療法などがあります。
がんの治療に伴う痛みというのは、上記のものによって起こるもののことです。
前回同様、研究や調査の報告をまとめていきます。
胃がんで幽門側(出口側)胃切除術と胃十二指腸吻合術を受けた236人を対象にした調査では、喫煙者もほとんどが術前1ヶ月間の禁煙をしていたそうです。
しかし、術後48時間までの経静脈的患者自己調節鎮痛法(IV-PCA)によるオキシコドンの消費量は生涯喫煙本数が100未満の禁煙者で有意に少なかったそうです。
オキシコドンというのは鎮痛剤です。
禁煙をしていても、吸っていた本数が長い人ほど痛みを感じやすいということですね。
前回は、がんそのものの痛みで禁煙は有効な研究がいくつか見られましたが、術後の疼痛は禁煙していてもこれまでの喫煙数で決まっている様子ですね。
しかし、100未満だとほとんどの喫煙者は該当しそうな気がしますがどうなんでしょう...
トロント総合病院のTransitional Pain Serviceに通院する術後患者239人を対象にした調査では、
喫煙者は非喫煙者に比べて
とされています。
この結果から、
「喫煙は術後急性痛だけでなく、3ヶ月後の慢性期の痛みにも関連する可能性が示唆される」
と言われています。
痛みに関してではないですが、Pepponeらは
全米の化学療法または放射線療法を開始するがん患者を対象に、
治療前、治療直後(2週間以内)、治療後6ヶ月の時点でアンケート調査を行い、治療によって生じる主な12症状
について検討しました。
その結果、喫煙者は
- 治療直後、6ヶ月後の症状の訴えが強い
- 6ヶ月時点での症状回復度も少なかった
と述べています。
また、Kawakamiらは、
非小細胞肺がんに対するパクリタキセルーカルボプラチン療法を受けた50人を対象にした調査では、
76%に末梢神経障害が生じたそうです。
多変量解析で低クレアチニンクリアランスと並んで、喫煙量が末梢神経障害の発症に関連していたと述べています。
さらに、米国、カナダ、英国の多施設において精巣がんに対する化学療法後1年以上経過した952人の有害な健康アウトカムを調査した研究では、
喫煙状況と有害アウトカムに有意な関連があったと述べています。
前立腺がん外部照射療法を行って2~14年間追跡されている836人の調査では、
腹痛および便意切迫の発生率がそれぞれ
- 喫煙者:18%、53%
- 非喫煙者:2%、20%
と有意差が見られたそうです。
喫煙者で強いという報告もあります。
これらを見てみると、治療していても、喫煙によって痛みが伴っていることがよくわかりますね。
せっかく治しているのに、痛みが伴ってしまうのは残念な話だと思います。
喫煙はがん治療による痛みや有害事象と関連し治療完遂の妨げとなり、さらには治療中だけでなく治療後長期にわたり患者のQOL(生活の質)に影響しうることが考えられます。
次回は、がんやがん治療と直接関係しない痛みと喫煙の関係性について紹介します。
参考文献
1)谷口千枝:喫煙と痛みーがん関連痛を中心にー.日本ペインクリニック学会誌,2018,25(2):p63~68.
2)杉山陽子,飯田宏樹:喫煙とがん患者の痛み.日本ペインクリニック学会誌,2019,26:p1~7.