喫煙によって痛みを感じやすくなる?がんによる痛みについて①
前回、喫煙とがんの痛みについて紹介させていただきました。
喫煙すると、がんによる痛みを感じやすくなります。
実際、どれくらい感じやすくなるのかをまとめてみました。
目次
がんによる痛みの種類
前回にも紹介しましたが、がんには
- がんそのものによる痛み
- がんの治療に伴う痛み
- がんやがんの治療と直接関係のない痛み
にわけられます。
今回は1. を紹介していきます。
がんによる痛みと喫煙
文献に載っていた研究報告をまとめていきます。
この論文では、current smoker、former smoker、never smokerと書かれておりました。
今回、これを
- current smoker:喫煙者
- former smoker:禁煙者
- never smoker:非喫煙者
と分けさせていただきました。
そのため、禁煙者は元喫煙者、非喫煙者は一度も吸ったことがない人 と解釈してください。
それでは、いきましょう!
Gonzalezらは、
肺癌患者2390人、大腸がん患者2993人を抽出し、がんと診断された4~6ヶ月後に電話によるアンケートで
- 痛みの有無
- 痛みの程度
- 痛みに対する治療の有無
を調査し、喫煙状況との関連を検討しました。
すると、
喫煙者は禁煙者に比べて痛みを感じることの頻度が高く、痛みの重症度が有意に高かったそうです。
大腸がん患者では、
喫煙者は、禁煙者、非喫煙者よりも痛みと痛み治療を受けた頻度が高く、非喫煙者に比べて有意に痛みの程度が強かったそうです。
同時に研究者は、痛み経験が多い患者ほど禁煙が困難であった可能性もあると述べています。
次の研究です。
Ditreらは、
外来がん化学療法を開始する18歳以上の患者224人
(乳がん35%、肺がん33%、その他のがん32%)を対象として
- 喫煙状況
- 現在有する痛みの程度
- 日常生活障害度
- つらさ
を調査しました。
その結果、
喫煙者は非喫煙者に比べて有意に痛みの程度が強く、日常生活も障害されやすかったそうです。
1ヶ月以上の禁煙者と非喫煙者との間には有意差はみられなかったそうです。
また、自己申告された痛みの程度と禁煙期間には
有意に負の相関が見られたそうです。
他にも、痛みによる障害度と禁煙年数も同様に負の相関が見られたそうです。
負の相関というのは、どちらかが多ければ、どちらかが少なくなるというものです。ちなみに正の相関というのは、どっちかが上がればもう片方もあがっている状態です。
つまり、禁煙期間が長ければ、痛みの程度は弱くなるというものです。
これは朗報じゃないですか?
1ヶ月以上禁煙していれば、非喫煙者と同じ程度の痛みで済むうえ、禁煙を続ければ痛みの程度も弱くなるのです。痛みが治まるのならまずは禁煙すべきですね。
さらに、痛みだけでなく、その他の症状に関しても、喫煙者は非喫煙者に比べて多いと報告されています。
次の研究にいきます。
Novyらは
MD Andersonがんセンターの痛み管理センターに受診した94人の喫煙者と392人の非喫煙者(喫煙歴は問わず、現在喫煙習慣がないもの)に対して比較したところ
喫煙者は
が高かったそうです。
また、オピオイド使用者におけるサブグループ解析では6ヶ月間の治療機関にわたってオピオイド使用量には差はなかったが、喫煙者はより強い痛みを訴えたそうです。
つまり、同じ量を使用しても喫煙者はより痛みを感じるということですね。
いかがでしょうか。
これだけでも禁煙によって痛みが変わることがわかると思います。
しかし、痛みはがんそのものだけではありません。
まだ、2と3が残っています。
次回は、2のがんの治療に伴う痛みと喫煙について紹介していきます。
参考文献
1)杉山陽子,飯田宏樹:喫煙とがん患者の痛み.日本ペインクリニック学会誌,2019,26:p1~7.