人が変わるために必要なこと・その効果!動機づけについて
人は目標を持つことで現状から変化しようとします。
それが成長というものです。
しかし、過食や喫煙、運動不足など、身体の不利益になるようなことを続けてしまう人がいるのが、現状です。
そういう人たちに「辞めたほうがいいよ」と言うとだいたいこのような回答があると思います。
「辞めたいんだけど辞められないんだよね」
よく聞きませんンか?
そして、自分でもある事柄でこのようなことを言っていませんか?
もし、治療者としてこのようなことをいう方と遭遇した場合、どのような声掛けを行っているでしょうか?
実は、声掛け次第で効果が大きく変わることがわかっています。
今回は動機づけによる効果と、動機付けに必要な要素を紹介しようと思います。
目次
変化が起こるエビデンス
どんな人にも今よりもよくなりたいというある目標があるはずです。
「現状からよりステップアップしたい」、「今よりも楽しく生活したい」、「こんな習慣は続けたくない」など、様々なことがあると思います。
中でも、禁煙や禁酒はとても大変だと思います。
禁煙は禁煙外来などがありますよね。
そして、メタボリックシンドロームの方などは病院や友達に「痩せましょう」と言われると思います。
しかし、簡単に辞められたり痩せられたら苦労しませにょね。
かといってきつく言われても始めようという気にもならないかと思います。
そこで、ここでは治療者側の視点から、どのようなアプローチが患者さんあるいは対象者の方の動機づけになるかを紹介しようと思います。
ざっとまとめると
- 正式な介入(カウンセリングや治療)によって生じる変化は、特殊な変化の形式というよりは、むしろ、自然な変化を反映している
- それにも関わらず、どの程度の変化が起こるかは、治療者との人間関係に、非常に強く影響される
- 比較的短時間(新しい対処技術を習得したり、性格の変化を経験したりするには短すぎる時間)のカウンセリングでさえ、変化が起こり得る
- 行動の変化は、治療の初期の段階で起こり、平均的には、治療の時間や回数はあまり関係ない
- どの臨床家に治療を受けるかは、治療の中断・継続・持続および治療結果に対する、重要な決定因子である
- 特に共感的なカウンセリングは変化を促進し、共感性がなければ変化は妨害される
- 自分が変化できると信じる人は回復してゆく。カウンセラーが変化を信じていると実際に回復する。改善の見込みがないと言われた人達は、回復率が低い
- 「変化を語る」言葉は重要である。変化への動機を反映した言葉や決意表明は、その人の回復を予見させる。一方、変化に反対する言葉(抵抗)は回復に支障を来す。どちらの言葉も、人間関係(カウンセリング)に深く影響される
色々と書きましたが、最も重要な点として
- 治療者側の人間性や共感性
- 適切な声掛け
でしょう。
もちろん、セラピストとしての知識や技術はもちろんです。
しかし、変化を実際に感じるのは目の前の患者さんや対象者です。
その人達の悩みや不安を解消できるかどうかは、治療者側の人間力であったり、共感する力がないと成せることではないと思います。
また、それらがあってこそ適切な声掛けができると思います。
こちらの思い通りにいかなかったり、相手のことを考えずに発される言葉は相手に不快に思われる可能性があります。
結果、順調に回復しないというケースになってしまいます。
この点に関しては、僕も苦手です。
しかし、技術としてこれらの点を学ぶこともできるのではないかと思います。
自然とできてしまう人たちはたくさんいるでしょう。
だからと言ってあきらめるのではなく、実際に多くの人と話して学んでみたり、コミュニケーション系の本を読んで知識や技術を学ぶということも大事だと僕は思います。
コミュニケーション力もある種技術で賄うことができます。
動機づけに必要な要素
そもそも動機とは何でしょう?
英語には、変化への高いレベルの動機を伝える言い回しがあります。
それが、
redy, willing, and able
です。
日本語訳で
準備ができている、やる気がある、できる
となります。
この3つ、
- 準備
- 意志
- 能力
が動機に必要な3つの大切な要素とされています。
一つずつ紹介していきます。
意志
準備からじゃないんかい!というツッコミはなしでお願いします(笑)
この意志には、人がどの程度変わることを、望み、求め、決意しているか が問われています。
これを「重要性の認識」といいます。
喫煙者を例にしましょう。
喫煙者は健康面よりも喫煙することによる満足感を得ることに重要性が偏っている人が多いです。
健康を取るか、満足感を取るかで、満足感を取ってしまっているんです。
そんな状態では禁煙をすることはありませんよね。
人が重要性を感じていなければ行動を変えようとは思いませんよね。
能力
二つ目は能力です。
勘違いしてはいけませんが、変われる人はある能力を持っているというわけではありません。
ここで大事なのは「変わる自信」です。
例えば、重要性の認識が十分にあり、効果があると信じられる変化の方法を発見したとしましょう。これを一般的効力感といいます。
しかし、その方法が難しかったら手をつけようとはしませんよね。
例として、倒立ができるようになりたかったとして、いきなり壁のないところから倒立をやりましょうと言われたら、怖くてできないですよね。
しかし、壁に背を向けた壁倒立なら倒立の練習ができますよね。
このように、その方法なら自分にもできると思えることが大事なのです。
一般的にこれを自己効力感といいます。
今回はあまり多く語りませんが、行動変容を起こす際にはこの自己効力感は非常に重要となります。
この自己効力感を感じたときに、ヒトは行動を起こし変化が始まります。
そのため、治療者側は対象者にとってどの程度ならできそうか、難易度の調整が重要になります。
これならできそうだというちょうどいい目標を一緒に作り、それを達成することで自信がついてきます。
準備
重要性を認識し、変わる自信がつけば行動を起こすには十分だろうと思いますよね。
しかし、そう簡単な話ではありません。
ある人は「禁煙は大切だが、現在のところ私にとって一番大切なことではない」と言ったとしましょう。
「禁煙は大切」と言っているため、重要性の認識はされているのがわかります。
では、自信がないのでしょうか?
この文言では自信があるかないかははっきりしません。
むしろ、禁煙を「今、やることではない」という意志がくみ取れます。
そう、ここで重要なのはその人の「優先順位」です。
どんなに重要性を認識していても、その人にとっての優先順位が低かったら行動を起こすことはなく、後回しにされてしまいます。
このような場合は、変わるために必要な情報を与えることで、優先順位が変わることがあります。
他2つのことも含めてアプローチ方法等、記事にて紹介できればと思います!
まずは上記3つの要素をしっかりと押さえておきましょう!
ここまで読んでわかったかと思いますが、変化の動機づけには「不快感」は与える必要はありません。
不快感というのは、苦悩やくうじょく、恥、罪悪感、不安などです。
もちろん、そのような経験が逆に励みになり、行動を起こして変化した人もいるでしょう。
それよりも、ヒトの建設的な行動の変化は、その人の内的価値、重要なこと、大切にしているものに触れたときに起こるのです。
内的な行動の変化への動機は、受容的で自信を与えてくれる雰囲気に育まれます。
理想の在り方や価値と比較して、苦痛に感じられる現在の状況を、恐れずに、安心して検討できる環境が必要なのです!
これから対象者に良くなってほしいと思っている方はぜひ上記を参照してください。
参考文献
ウイリアム・Rミラー、ステファン・ロルニック:動機づけ面接法 基礎・実践編