COPDー性差について
引き続き、COPDの紹介です。
今回は、性差について紹介させていただきます。
性差があることはあまり考えていなかったので僕も勉強になりました。
目次
女性のCOPD患者数の増加
従来COPDは男性に多い疾患と考えられていました。(僕もそう思っていました。)
そう思うのも、おそらくは喫煙者に男性が多いからだと僕は思います。
しかし、米国では1971年から2000年の間に女性COPD患者の死亡者数が5倍に増加し、2000年には男性を上回ったそうです。
また、イギリスにおいても1990年から1997年の間に、新規にCOPDと診断された患者数は女性が男性を上回ったそうです。
女性の患者数が急に増えたのはびっくりですね。
では、日本ではどうでしょう。
実は日本でも同じようなことが起こっています。
日本では、女性の20代、30代の喫煙率は増加しています。
COPDはタバコ煙によって発症するようなものなので、喫煙率が増えていけば当然COPDの発症率も高くなりますよね。
また、注意が必要なのは女性は男性よりも喫煙量が少ないにもかかわらずCOPDが増加しているということです。
これには、女性のほうが喫煙に対する肺の感受性が高いことが関係しています。
喫煙感受性と気道過敏性
上記にあるように、COPDを引き起こすもっとも重要な要因は喫煙です。
喫煙は少年期から青年期における肺の発達を障害します。
そして、その程度は女性の方が強いです。
これは喫煙だけでなく、メサコリン吸入で調べた気道過敏性も女性のほうが亢進していたそうです。
その理由は、女性の方が肺容量や気道経が小さいため、相対的に気道内濃度が高くなるためと報告されています。
ほかにも、メサコリンに対する気道過敏性がもともと亢進しているとの報告もあります。
どのような結果であれ、女性では気道過敏性が亢進しているということです。
そして、当然のことですが、喫煙量が多いほど、気道過敏性は更新します。
チトクロームP450(CYP)酵素活性と女性ホルモン
たばこの煙には多くの有毒ガスや粒子が含まれています。
それらは主に気道上皮に存在するCYP酵素により代謝されています。
多くは無毒化されるのですが、benzo [a] pyreneのようなCYP酵素で酸化され、発癌物質に変わるものもあります。
本来、この酵素の作用に性差は起こりにくいはずなのですが、女性の喫煙者の場合、男性喫煙者よりも肺におけるCYP酵素の発現が高く、ニコチンやコチニンの代謝もはやいそうです。
さらに、エストロゲンがこのCYP酵素活性を高めているそうです。
このCYP酵素活性の亢進が、女性のCOPD増加の理由の一つと考えられています。
禁煙による呼吸機能の改善効果
COPDになりやすいということは、治りにくいということなのかというと、そうとも限りません。
そして、一番の改善策はもちろん禁煙です。
女性のほうが禁煙による1秒量(1秒で履ける空気の量)の改善の程度はよいそうです。
また、禁煙による吸入ステロイド薬の気管支拡張効果の改善も女性の方が大きいと言われています。
他にも、ステロイドによる1秒量の改善効果はありますが、6ヶ月までといわれています。
臨床症状と生活の質(QOL)
簡単にまとめていきます。
- 女性の方が男性よりも喫煙指数が少なくガス交換障害の程度も軽い
- しかし、QOLが低く、呼吸困難の訴えも強い
- 急性増悪の回数も女性の方が多く、運動耐容能も低い
- 年齢、1秒量、喫煙指数で一致させても、女性のほうが呼吸困難の程度は強い
- ヨーロッパでの研究によると息切れ、喘鳴、咳嗽、痰量に男女差を認めていない
- 女性のほうが鬱状態や不安状態などの精神障害の頻度が男性より1.5~2倍高い
予後
予後に関しては、女性の方が予後が良いという報告や、女性の方が予後不良という報告もあったりと、意見が一致されていません。
はっきりする機会はいつになるでしょうか...
いかがでしょうか。
今回は一つの文献を簡単にまとめて紹介しました。
とってもよくまとめられているのでぜひ一読してみてください。
参考文献
1)宮本顕二:慢性閉塞性肺疾患(COPD):診断と治療の進歩 Ⅳ. 最近の話題 1. COPDと性差.日本内科学会雑誌,2008,97(6):p114~119.