喫煙による影響
喫煙のリスクに関わる大きな問題の1つに、「喫煙者は喫煙のリスクをよく理解したうえで喫煙しているのか、それとも喫煙のリスクを過小評価して喫煙を続けているのか」という問題があります。
初投稿となる今回は、喫煙による影響について、まとめていきます。
目次
どんな病気になりやすいのか
まずたばこによってどんな病気にかかるのか、まとめていきます。
- がん(肺、喉頭、口腔・咽頭、食道、胃、膀胱、腎盂・尿管、膵)
- 虚血性心疾患
- 脳血管疾患
- 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:以下、COPD)
- 歯周疾患
- 低出生体重児
- 流・早産
- 糖尿病1)
- メタボリックシンドローム
などがあります1)2)。だいぶありますね。がんだけでもかなりあります。
聞きなれないと思いますが、COPDというのは長期の喫煙によって生じます。
喫煙によって脳梗塞や虚血性心疾患等の発症リスクが高くなることは確立した疫学的事実であり、妊娠中の喫煙は流早産を伴いやすく、心身に異常を持つ子どもを生むリスクの高い行為とみられています3)。
これらの影響は実際に吸っている人だけでなく、タバコから出る副流煙によっても起こります。喫煙者が吸う主流煙よりも、副流煙の方が害があるのはご存知ですよね?
そのため、タバコを吸っている自分だけでなく、吸っている人の周囲の人にも影響を与えます。
禁煙対策や、ファミレスでの分煙が行われるようになっているのはこういうためでもあります。
タバコによる死亡者・死亡率について
タバコを吸うことで死亡率が高くなることはほとんどの人が知っていると思います。
実際に、日本人のタバコによる年間死亡者は
- 能動喫煙:約13万人
- 受動喫煙:約1万5千人
と推計されています4)。
受動喫煙でもこれだけの人がなくなっているのは正直驚きです。
死亡率に関しては、吸う人は吸わない人と比べて男性は1.6倍、女性は1.9倍という報告もあります。
死因ごとに見ると
- がん(男性:1.6倍、女性:1.8倍)
- 循環器疾患(男性:1.4倍、女性:2.7倍)
- その他(男性:1.6倍、女性:1.4倍)
また、亡くなられた男性の5人に1人は、吸わなければ防げた死亡であり、たくさん吸えば吸うほど死亡率は高くなります5)。
「だからなんですか?」という人へ
これらを見ても、
- 病院にかかっても治るだろう
- まだまだ先の話だ
- 自分は大丈夫だろう
- 別に長生きしたいわけじゃないし
なんて思っていないでしょうか。
はっきり言います。
病気にかかってから煙草をやめるのは遅いし
病気も完全によくなるとは限らないし
若いうちからじゃないと禁煙は効果があまり得られないし
大丈夫なわけがないし
病気にかかってすぐ死ぬわけじゃなく、苦痛も当然あるから長生きどうこうの話じゃないです。
例としてがんによる痛みについて挙げます。
頭頸部がんと診断されたばかりで治療が開始されていない人でも、喫煙者は禁煙者や一度も吸ったことがない人に比べて痛みを強く感じたという報告6)もあります。
このように、実際に治療が始まる前の段階から、吸っているか吸っていないかでだいぶ変わってきます。
今後、禁煙によるメリットや、がんやCOPDなどの病気についても説明していき、禁煙の啓発が行えればと考えています。
下記に参考文献を載せています。こちらのほうが詳しく書かれていますので、ご参照ください。
参考文献
1)厚生労働省 たばこ
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b4.html
2)中村 正和:慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD):診断と治療の進歩 Ⅲ. 治療の進歩 8. 予防としての禁煙. 日本内科学会雑誌,2008,97(6):p103~113.
3)禁煙ガイドライン
http://lhttp://tobacco-control-research-net.jp/data/document/JCS2010murohara.d.pdf
4)喫煙と健康 喫煙の健康江協に関する検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135586.html
5)国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ たばこと死亡率との関係について
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/252.html
6)谷口 千枝:喫煙と痛み―がん関連痛を中心に―.日本ペインクリニック学会誌,2018,25(2):p63~68.